講演1 :「身近な京都〜お客様へのおもてなしを通じて〜」
横 山

  先ほど一番初めにお話しましたように,サービスとホスピタリティ。これも私が勝手に考えていることで,当っているかどうかわかりませんが,私が思うにサービスというのは巨大なマーケットに同じ価値,定まった価値として提供していくものじゃないかなと思っています。ホスピタリティというのは一人の顔をみて,そのニーズを感じながら提供していくものかなと感じます。私たちは今ホスピタリティを提供しようと思っています。一人一人の顔を見ながらニーズに応えられるものを提供していきたいと思っています。それにはやはり,もっと成長するしかないのかなと思います。私達が,基礎となる知恵を持つことが必要です。桂三枝さんと一緒に食事する機会があったのですが,おっしゃっていたのは,「芸を磨くにはどうすればいいか?芸を磨くには自分を磨け」。私達も同じで「おもてなしを磨くには自分達を磨け」です。自分達がどれだけ知識が豊かになり,感性が豊かになり,歴史を知って慣習の理解をして,金融や経済の理解をして。それによって,もっと違うおもてなしができるのかなと思います。昔,ホテルマンは政治の話や経済の話や宗教の話をするなって言われました。だからいつも話すのは「良い天気ですね」っていう話だけしかない。これではその後が続かないんですよ。それと,「今日の飛行機はどうでした?」って聞く。ドアマンがいて荷物降ろした時,「お天気どうですか? 長い飛行機でしたね。」今度,ベルボーイがいて荷物を運んで一緒にチェックインに行く。「お天気はどうでした? 飛行機長かったでしょ。」これはナンセンスです。これがサービスです。サービススタンダードとして私たちはお客さまに会った時に目を合わせて荷物を持って御案内しましょう。これはベーシックになければいけない。だけど目指そうとしているのはその上のホスピタリティであって,その方のことをどこからいらっしゃった方なのか,何を目的として来られているのか,どなたと一緒なのか。そういうことを理解することによって,「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」その人が南米から来たら,もしかしたらこうやってハグしちゃうかもしれない。東南アジアの人だったらこれは嫌がられる。少し距離を置かなきゃいけない。アメリカの人は握手するかもしれない。そうした文化的なこと,世界の慣習の違いもしっかり頭に入れ,勉強して接することによって,そこでもう一歩,他のホテルとは差別化ができる。社会の中で,私たちはやはり差別化ということをしていかなきゃいけない。差別化も施設の差別化だけじゃなくて,人のおもてなしをもって差別化することは十分できます。京都はまさに他の地域と差別化している。他の地域にないものを持っている。他の地域にはこれから決して作ることができない1200年の都としての歴史がある。それだけの知識がここにはあって,情報として集めてその知恵として生かすことが必要だと思います。私たちはホテルとしてサービススタンダード以上のホスピタリティを提供していきます。もちろん全員ができるとは思っておりません。でも,それを目指して一人ひとりがもっと勉強していく。私がいつも言うのは単純なことです。新聞を読め。美術館に行け。音楽を聴け。映画を見て来い。こんなことからなんです。いろんなところにいろんな感性があって,雑誌も本も読みきれないほどありますし,そういう身近なものからいろんなものを吸収していく。

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