京都市総合企画局政策企画室京都創生課長 石田 洋也
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京都の町にはどのような魅力・特性があるのでしょうか。少し特長を紹介させていただきます。
京都は、1200年にわたる歴史を積み重ねてきた世界有数の歴史都市、文化・芸能の継承ととともに、新しい創造を続ける文化芸術都市・宗教都市、また、日本人の心のふるさととして5千万人の観光客が訪れる国際観光都市、人口の約1割、約14万人の学生が学ぶ大学の町、学生の町、優れた伝統産業を基盤に先端企業が栄えるものづくり都市など、いろいろな顔を持っております。
京都が誇る自然・都市景観、伝統文化は日本の貴重な財産であるとともに、世界的にも貴重な都市であり、宝であると思っております。京都の町を守り、育て、そして未来へ大切に引き継いでいくため、京都市では市民の皆さまとともに、全国に先駆け、町づくりに関するさまざまな取組を進めています。
京都市では、大きく三つの分野にわたって取組を進めています。
まず、景観の分野です。京都市では「新景観政策」を進めており、建物の高さの規制など、全国に類のない取組を進めています。とりわけ、屋外広告物につきましては、京都市で条例をつくり、派手な広告など、条例に違反する状態のものをなくしていく取組に力を入れているところです。
また、京町家を守るために、市独自の制度として、「京町家まちづくりファンド」を設け、改修に掛かる費用を助成するなど、さまざまな取組を進めています。
次に、文化の分野です。
京都市では、世界遺産をはじめ、国宝や重要文化財などの保存・継承を進めています。同時に、文化財に匹敵する価値があるもの、長い歴史の中で引き継がれてきた建物や庭園、京料理、あるいは花街の文化など、そういった貴重な財産をこれからも守っていこうと、独自の制度を設けて取組を進めています。
観光の分野では、外国人観光客や、国際会議の誘致などにも積極的に取り組んでいます。これらの取組は着実に成果を挙げていますが、残念ながら、京都だけがいくら努力をしても、なかなか解決できない課題が数多くあります。
まず景観の分野です。例えば市内に約4万8千軒残っていると言われる京町家ですが、相続税や維持・管理の問題などで継承することが難しいケースが多く、毎年2%ほどが消失しています。
また「建築基準法」ができる前に建てられたものは、増築したりする場合に、今の法律の基準に合わせたものにする必要があるため、伝統的な意匠、形態を保てないという課題があります。
次に無電柱化ですが、電線や電柱のない美しい町並み景観をつくりだすためには、1キロ当たり約7億円という巨額の費用負担が必要になるという問題もあり、なかなか進みません。
文化の分野です。伝統文化や伝統芸能・伝統産業など、京都には、他の都市にはない独自のものが数多く受け継がれています。しかし、担い手の高齢化や後継者の不足、そして伝統芸能を鑑賞される方が減ってきたり、伝統工芸品へのニーズが少なくなったりしているため、危機的な状況にあるのも少なくありません。
このように、日本の原点とも言える京都の景観・文化は、担い手や所有者だけに任せていたのでは、この先、なかなか守りきれない状況にあると言えます。そのため、これらを保全・再生していくためには、国による支援が何としても必要になります。
そこで、「国家戦略としての京都創生」という取組を進めております。
このポイントは、「国を挙げて京都を再生し、活用する」というところで、京都創生を国の戦略としてしっかり位置付け、さらに国が推進する政策を実現するために活用してもらおうというものです。
京都市では、この「国家戦略としての京都創生」の実現に向けて、三つの柱を軸に取組を進めています。
一つ目は「国への働きかけ」です。こちらにつきましては、制度面や財政面で、京都が抱える課題の解決につながるように、京都市長を先頭に提案・要望を行っています。また、国の関係省庁との研究会をつくりまして、国の幹部職員の皆さんに直接、京都の実情を訴えながら、国と京都市とが一体となって、京都の役割や活用方策の研究を進めています。
また、京都創生のPRとしては、ここ東京においては平成23年から毎年2月に「京あるきin東京」を開催しておりまして、今年で4回目の開催となります。本日の講座もその一環として取り組んでいます。
これらの取組の中で、すでに実を結んだものもございます。
景観分野では、京都の先進的な取組をきっかけに「景観法」、あるいは「歴史まちづくり法」という法律がつくられました。その結果、京町家や上七軒の歌舞練場など、景観や歴史面で重要な建造物を修理する場合に助成する制度がつくられ、これらを活用しながら建物の改修や無電柱化などの取組を推進しています。
文化の分野での成果です。まず、世界遺産の二条城ですが、国の補助制度を活用して、建造物の本格修理に向けた調査工事や障壁画の保存修理を進めています。最近では、唐門を改修しました。
次に、文化財の防災です。国が新たにつくった補助制度を活用して、清水寺と、その周辺の文化財や地域を火災から守るために「耐震型防火水槽」を整備するとともに、文化財に燃え広がらないような放水システムを整備しました。これは全国で初めての取組です。
次に、「古典の日」に関する法律です。これは、11月1日を「古典の日」と定めて古典に親しもうというものですが、京都の強い働き掛けで、国会議員の有志の方に議員連盟をつくっていただき、法案を提出・成立していただきました。
最後に、「和食;日本人の伝統的な食文化」です。こちらは、昨年の12月にユネスコ無形文化遺産に登録されました。これもオール京都で、登録に向けて力を合わせて取り組んできました。
観光の分野の成果です。こちらは観光庁と京都市とで共同のプロジェクトを立ち上げており、外国人観光客の誘致や、受け入れ環境の充実などに取り組んでいます。これは京都を世界トップ水準の外国人観光客の受け入れ体制を整えることで、全国のモデルにしようというものです。
この他にも、成果があります。例えば、京町家の再生に対して、海外からの支援を頂いております。これは、京都市景観・まちづくりセンターや京町家再生研究会などがニューヨークで開催いたしましたシンポジウムがきっかけとなって、アメリカのワールド・モニュメント財団から京町家を改修して活用する二つのプロジェクトに対し、多額の支援を頂くことができました。
京都創生の取組の意義ですが、この取組によって、国が新しい制度をつくったり、制度が見直されたりしております。これが京都自身のためになることはもちろん、全国の町づくりを京都がけん引する役割も果たしています。
京都創生の実現に向けて、新たな取組にも挑戦しています。最近の主な成果として、外国人料理人が、日本料理のお店で働きながら学ぶことができるようにするための「入国管理法」上の特別措置は、地域活性化総合特別区域計画が国の認定を受け、外国人の日本料理店での就労が、全国でも京都市内に限った特別措置として実現することになりました。
今後も、「日本に、京都があってよかった。」と実感していただけるよう、京都創生の取組をさらに進めてまいりたいと考えています。
今後は特に、皇室の方に、京都の御所にもお住まいいただいて、京都と東京双方が都としての機能を果たしていく「双京構想」や、また新しい国土軸であるリニア中央新幹線「京都駅ルート」の実現にも力を入れていきたいと思っております。
最後になりましたが、本日ご参加の皆さんにおかれましても、これを機会に、京都の魅力や、またその裏側にある課題を再認識いただきまして、京都創生の取組を、身近の人にもお伝えいただければ幸いです。
皆さまのご理解、ご協力を得て、今後も、世界の皆さまから愛される京都であり続けるために取り組んでまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ご静聴ありがとうございました。
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