東京生まれ東京育ちです。国際日本文化研究センターの所長になり5年になります。35年前に関西にきて大学で民俗学や文化人類学を教えていました。
そのころ、多くの大学の先生方は「京都は平安時代から王朝時代の雅の文化を守っている」という京都の雅の部分に着目した意見を持っていましたが、私は、京都の雅ではない、裏側の影の部分にも目を向け、表裏一体で京都の全体象を見ようと考えました。
京都は、よその地域からやってきたものを、貪欲に取り込みながら、そのエネルギーや力や、知恵やそういったものを取り込み、何か新しいものをつくり出してきています。
私も、気がついたら京都や関西の文化の中に取り込まれて、京都の文化を何らかの形でつくる役割を担っているのかもしれません。
京都を外から、或いは、まがまがしい領域、これを異界と呼ぶことにしていますが、「異界から見ていくと、見えてくる京都というのが何なのか」が、私の研究テーマでした。異界から見ることによって、京都の人々も自分たちの文化が、どのように外から眺められているのか気づきます。京都はこんなに素晴らしい所だとか、実はこういうところが遅れているとか。そうすることで、自分たちのプラスの面、マイナスの面を踏まえて、次の京都はどうすればいいのかというのを考えていく手がかりになるのではないかと思います。
異界、あるいは外、周辺から京都を眺めて見る。それは、同時に日本を眺めることでもあると思います。
花街の文化が京都をつなぐ無形文化遺産に選定されるなど、これまでは文化財として認められていなかったものが文化財として認められるようになってきました。私は、大衆文化の中にこそ未来の文化はあると思っています。日本人の文化を世界の中で考えるという形での大衆文化の研究が、未来の日本文化をつくる手がかりになると思っています。
|