「歴史が活性化する現在と未来」というタイトルで話をします。よく現在から過去を見るという言い方をするのですが、「歴史が今を見る」、つまり、「昔が今を見る」と理解していただけたら良いと思います。それは、京都のまちが不思議な場所で、その歴史の積み重ねがそのまま現代につながっていって、現代と歴史、歴史と未来が自在に行き来している、そういう印象をうける場所だからです。
インターネット世代「雲の人たち」と、実際に体験し、直に確認していていく方法で文化の継承をしてきた世代「森の人たち」の2つの間に今起こっていることが何かというと、分断ではなくて、交流なんです。その交流が非常に面白い。小さな村で、細々とお酒を作っている人たちがインターネットで世界にその情報を発信することで、遠い外国から注文が入るなんてことが起こる。逆もあって、若い人たちが、自分が実感しないということに不安を持ち、「京都に行こう」と言って、実際に行き、そこで見て触って体験したいという傾向がすごくあったりする。そこで、一つの「流れ」が起こっている。そういう風に世界を見ていただけると、見方が変わってくるんじゃないかなと思います。
ルーブル美術館では、ビヨンセという人気歌手に依頼して館内でミュージック動画の撮影をしてもらいました。モナ・リザやサモトラケのニケ等が登場し、歌の世界的大ヒットと共に、動画を見た大勢の若者が来館するようになりました。ルーブルがターゲットとしていたのは次の世代だったのです。
パリや京都のように新しいものと古いものが、無理なく共存してけるまちというのは、やっぱりそれなりの度量があります。つまり、そういう歴史的なゆとりがあればあるほど、どんどん新しいものを受け入れていく余裕があるし、生活の中での美、つまり生活の質、美意識がすごく高いわけです。日本人、中でも特に京都の人は意識が高いと思います。そういう部分を、色んな形でハイライトしていくということは、無理して「現代」として特化する必要は全くなく、既存のものをいかに今に繋げて、よりかっこよく見せていけばよいか、ということだけです。少しも大変ではないのです。
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