お話:京都創生百人委員会世話人代表 国際日本文化研究センター顧問 梅原 猛

梅原氏  私は仙台の生まれで愛知県で育ったものですが、昭和20年、戦争の終わった年に京都大学に参りまして、それから60年、京都に住み続けております。京都に60年住んで、京都は世界一美しいまちであるということを痛感致しまして、私は京都に来られて京都に住み続けられることをこよなく幸福に思うものであります。

 市長からお話があったように京都創生百人委員会というものが3年前にできました。私は前から、京都の美しさは京都市だけでは守れない、国家がこの美しさを守らねばならない、そしてさらに京都市の魅力を世界に発信する、そういうしくみを作らなければならないと、歴代の市長にそう申しました。幸いに大変に実行力に富む市長が国家戦略による京都の創生ということを考えられて、私はその委員長になったのでございます。

 京都は千年の都。しかも自然は美しい。あるフランスの画家は「日本の自然は絵のように美しい」と言いましたけれど、まさに京都は美しい。長安洛陽の都を真似したといわれますが、長安洛陽の都とは違うのです。長安洛陽の都には都の周囲に山がありません。あってもそれは裸の山です。京都のようにうっそうとした、ほとんど人すら入ることができないような山に囲まれている都は世界のどこにもありません。自然も美しいですが、同時に歴史が美しい。この日本の歴史が千年の都だった京都に結集されている。例えば日本を代表する小説の『源氏物語』。この小説の舞台は京都です。京都のまちには光源氏が、恋人たちを訪ねたその跡があります。そして、日本を代表する演劇は何かというと、能であります。能の舞台もその8割は京都であります。京都の山々などが能の中でうたわれている。このような都市はない。フィレンツェにしても16世紀から。パリはもっと新しい。こういう千年の都のあったまちは世界に類がないと思います。

 このまちを守らなくてはならないと、最近日本の中でもそういう風潮が非常に強まってきています。今、市長がおっしゃったように、観光客が増えている。安倍総理は「日本は美しい国だ」と言います。何が美しいか。自然が美しい。歴史が美しい。歴史が美しい国であるとしたら、京都を良くして欲しい。

 京都の皆さんが燃えて、京都の美しさを守るという運動を続けていただきたいと思います。それから、京都は全体が博物館ですから、この博物館を活用する、例えば歴史博物館というようなものを例え10年かかってもつくっていく。そういうような形で運動することが、「京都のためだけじゃない。日本のためだ。」と思うのです。

 今日は、日本を代表する美術史家で京都国立博物館長の佐々木丞平さんに講演を願って、そして京都の各界を代表する方々によってシンポジウムが行われます。皆さん今日の会をお聞きになりまして、どうかこの運動にぜひお力をお貸し願いたいと思います。どうもありがとうございました。

司会

 ありがとうございました。今一度大きな拍手をお願い致します。

 梅原先生、御登壇の皆様、ありがとうございました。

 それでは、次第に従いまして進めて参りたいと思います。次に、佐々木丞平京都国立博物館長より講演をいただきます。内容は「悠久の日本美を京都から世界へ」。佐々木様は昭和16年兵庫県でお生まれになりました。京都大学卒業、京都大学大学院を修了され、文化庁文化財調査官、京都大学大学院文学研究科教授をお務めになりまして、平成17年、京都国立博物館館長に就任されました。それでは佐々木様、よろしくお願い致します。

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