講演1 :「身近な京都〜お客様へのおもてなしを通じて〜」 | |
横 山 |
まさか,私は京都で仕事をするなんて少しも考えておりませんでした。初めて京都に来たのは小学校の修学旅行です。でも,すみません,どこに行ったか全然覚えていません。その後,私の父がとても京都が好きで,父に連れられて何度か京都に来るようになりました。いわゆる3世代旅行です。両親と,祖父母と,私と弟と,3世代。京都の四条にある鶏料理屋さんには,実は3世代ずっと通い続けているんです。そんなつながりが,まず私にとっての京都です。これまでいろんな経験をさせていただきました。グアムやオーストラリアや,いろんな街に住みました。街は顔を持っていて,例えば浦安という街は新興住宅地で埋め立てのまちです。ディズニーランドができて,住宅地ができて,でもひとつ外れると漁師町なんですね。シドニーは,街の歴史はまだ浅いですが,ロックスという初めてイギリスからオーストラリアに渡ってきた場所であるとか,観光に力を入れています。そのまちの環境,気候,文化などによって,人間の宗教観や道徳観なども育っていくのかなと思います。 ありがたいことに日本には四季があります。四季の豊かさというものが日本の文化を育んでいるのかなと思います。特に,京都の四季の豊かさには感動します。夏は蒸し暑いこと。冬は底冷え,花冷えがあること。でもそれは,私にはすごく嬉しくて,例えば,そういう環境があるからこそ日本食が発展したのだろうと思います。夏をいかに涼しく見せるか。例えばお軸にしてもお花にしても料理の盛り方にしても,夏の暑さを払拭するような,そのための知識が何世代も続いて残っているんだと思います。私も今,12ヶ月,24節,36節,例えば啓蟄とか,そういう言葉をいろんなことで知りました。お客さまがお越しになるとウェルカムカードというのを書くのですが,必ず季節の言葉を入れるようにしています。四季折々の京都というのが私に影響を与えてくれました。御茶菓子にしても,食材にしても,いけばなにしても,四季折々のかたちがある。そういうものが,ホテルでも皆さまに御提供できればいいなと思います。そうした知識はまだまだ世界中には広まっていません。もちろんいろんな方々が海外へ行かれて日本の文化を広める努力をされています。たしかにシステムや作法としてはお伝えできるのでしょうが,四季の豊かさやそこから高まった文化については,まだまだ伝えられていないのではないでしょうか。逆に,ここにいらっしゃる皆さんの知識の量というのはものすごいと思います。私が持っていないような知識を経験知として持っていらっしゃって,それをどのくらい,いろんなところで放出されていらっしゃるのか。京都の環境や習慣に関する知識をいろんなところで皆さんがお話していただくのが良いんだと思います。 |