講演2 :「青蓮院門跡について」 | |
東 伏 見 |
そうした歴史の中で,門跡寺院というのは,他の寺院とはちょっと違う。なんだか敷居が高くてなかなか行かれない場所,というように皆さん思ってらっしゃるのではないかと思いますが,私どもお預かりしている者としましては,多くの方においでいただいて,この美しい苔に覆われたお庭を廻っていただいく。ここは天皇のお子様が仏門に入られて静かにお暮らしになるという場所であったわけですから,昔は入れなかったわけですけれども,今は皆さんに自由に入っていただいて親しんでいただけるわけでございます。一方で,やはりお寺でございますから信仰という仏さまの教えにも親しんでいただく。そうした両方があいまって,おいでになった方が非常に心がやすまった,悩んでいたことに何かふっと違う道が見えたりとか。そういう方,多いんですね。私ども,座敷のところに「思いつくままに」というノートを置いてございます。ここにいろんな方が書いていらっしゃるんですけれども,毎朝,私,おつとめが終わりましてからこのノートを拝見することにしております。いろんな方がいろんなことを書いてらっしゃる。本当にいろんな悩みを持っていらっしゃる方が,ここへいらっしゃって,すっとした気持ちになれたとか。そうした環境というのは,日に日に世の中からなくなっているんじゃないかと思います。横山さんが先ほどおしゃっていましたね。どんどん時間軸が短くなっていること。本当に追い立てられているように感じるわけでありますけれど,そういう中で,座敷に座って四季の移ろいを感じる。そうすると,忘れていたことを思い出したりだとか,そういう場になっていただけるとそれだけでもありがたいな,と思うわけです。そしてやはり本当の教えと申しますか,仏教の教えにも親しんでいただきたい。こちらは密教のお寺なんです。護摩を焚いて御祈祷をする。大日如来様そして不動明王をおまつりして御祈祷をしております。まずはおいでいただいて,いろんなことを感じていただく。さらには,信仰を深める場にもしていただく。そうしたことがこれからの門跡寺院のあり方ではないかと思っております。 |